第33回
岐阜県理学療法学会学術集会

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特別講演

抄録

「再生医療と理学療法
~大腿骨の骨壊死に対する臓器・組織移植と細胞移植に注目して~」
教授 黒木 裕士 顔写真

京都大学大学院医学研究科 教授 黒木 裕士

【はじめに】
大腿骨の骨壊死部位には、顆部(膝関節)と骨頭部(股関節)の2か所がある。顆部骨壊死に対する臓器・組織移植の例として骨軟骨移植(モザイクプラスティ―)を、骨頭部壊死に対する細胞移植の例として骨髄間葉系幹細胞を用いた骨再生治療を紹介する。

【臓器・組織移植と細胞移植】
臓器・組織移植と細胞移植では違いがある。前者ではすでに臓器・組織の形態と機能が備わっているが、後者ではそうではない。前者では免疫拒絶反応に留意しつつ、移植された臓器・組織を生体にうまく生着させることが重要となるのに対し、後者では、細胞が生体に生着して生存すること、およびその細胞が組織・臓器を再構築して、組織・臓器としての形態と機能を再獲得することが重要となる。再生医療は、この細胞移植を行う後者であり、理学療法との併用に期待が寄せられている。

【生物学的反応を意識した理学療法の重要性】
臓器・組織移植でも細胞移植でも、移植された臓器・組織や細胞の生着および成熟を考慮して増殖期、移行期、リモデリング期、成熟期の4期に分けて理学療法を行う考え方が重要であり、骨軟骨移植および骨髄間葉系幹細胞を用いた骨再生治療における理学療法例を紹介する。

【おわりに】
大腿骨の骨壊死だけでなく、脳血管障害、パーキンソン病、脊髄損傷、末梢神経損傷などにおいて、細胞移植等による再生医療の医師主導治験が行われている。今後、条件を満たした認定医療機関等においてそれらの新規医療が行われると考えられるが、その際には、生物学的反応を意識した理学療法が重要となることは間違いないであろう。

講師プロフィール

黒木 裕士(くろき ひろし)

京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系 専攻
運動機能解析学分野 教授